今日はたんぽぽのお話をひとつ・・・
そう。庭の手入れをちょっとでも油断すると、
あちこちに出没するあのたんぽぽのお話です。
ご自分の庭や玄関先、近くの公園、街路樹の脇・・・
いたるところで見かけるたんぽぽ。
そのたんぽぽ、もしかすると外来種、つまり西洋タンポポかもしれません。
ここは日本なんだから、身近で見かけるたんぽぽは
日本在来種だと決めつけられないということなのです。
エゾタンポポ
シナノタンポポ
カントウタンポポ
トウカイタンポポ
カンサイタンポポ・・・ほか数十種類・・・
それぞれ花の大きさや総苞片のかたちなどが少しずつ違ってはいるものの
これらは全て日本在来種。
このうちエゾタンポポだけは在来種でありながら他のたんぽぽとは
染色体の数と繁殖のしくみがちがう。でも在来種。
名古屋で見られるのはトウカイタンポポってとこかしら・・・
しかし・・・しかしです。
どうらや日本在来種のたんぽぽはもう街中では繁殖していないらしいのです。
そもそも西洋タンポポが日本にやってきたのは
明治のはじめ頃。放牧している乳牛にたべさせるために
北海道の牧場に植えたのが始まりとのこと。
葉や茎を切ると白い乳液が出ることから、
西洋では乳の出がよくなると信じられていたからだそう。
メディカルハーブを学んでいらっしゃる方ならご存知のはず、
ダンディライオンには催乳作用があると習いましたよね。
その後、昭和30年代~40年代に西洋タンポポは日本で爆発的に増殖。
いわゆる高度成長期ですよね。
車の保有率が高くなり始めたのをきっかけに、
土の道はアスファルトに変わり、
野山にも道をつくるべくブルドーザーが入って、
日本在来種のたんぽぽを根こそぎ掘り返されてしまったとか。
西洋タンポポにとっては願ってもない繁殖の大チャンス!
自然繁殖、つまり、日本在来種のタンポポの縄張りがどんどん減ったところに
西洋タンポポが替わって増殖しはじめたわけです。
でもどうして?と、思った方も多いはず。
西洋タンポポが繁殖できるのなら、日本のたんぽぽだって・・・
日本のたんぽぽと西洋タンポポの大きな違いはその繁殖力!!!
①まずタネの数。
関東たんぽぽが60から90くらいなのに比べ、
西洋タンポポは150から200くらい。・・・約2倍!!!・・・
②春だけでなく、夏から冬も開花結実するので、その分おおくのタネをつける
③タネの重さが在来種に比べて軽く、遠くまで飛ぶことができる
④タネの発芽温度域が幅広く、いつでも発芽できる。
⑤成熟が早く、小さくても開花する力がある
⑥一年を通じて葉を広げて光合成を行なっている
ね。これだけでも日本たんぽぽに勝ち目はございませんO(>_<)O 加えて、染色体の数や生殖上でも大きな違いがあるとか。 ⑦染色体数の面で3倍体である ⑧単為生殖でタネをつくることができる もう、西洋タンポポにひれ伏すしかありません。 ⑦の染色体の「3倍体」というのは、 ふつう在り得ない。 生物はふつう、父方と母方から1セットずつもらって生まれてくるので 2セット保有。つまり「2倍体」。 3倍体ということは3セット保有していると言うこと。 これでは減数分裂がうまくできず、正常な花粉や卵がつくれない。 実際、西洋タンポポの花粉を顕微鏡で見てみると、受精能力はないそうです。 植物だけでなく生物の常識として言うならば、 お父さんとお母さんがいて、はじめて子どもができるのに、 3倍体では同じ方法で子どもはつくれないということなのです。 ここからが自然の力のすごいところです・・・ そんなハンデがありながら、何とか子どもを作るために 西洋タンポポが編み出した解決策・・・ それが⑧の単為生殖。 別名「無融合生殖」とも呼ぶそうですが、 早い話が「お父さんだけ」、もしくは「お母さんだけ」で子どもをつくれるんです!!! 単純計算すると生殖率が2倍ということですよね。 さっきの2倍とあわせると4倍ですぅ(><) 西洋タンポポが優位なのもうなずけますよね(;_;) でもそうなると新たな疑問が・・・ 単為生殖ってことは、子は親と完全に同一な遺伝子をもっているってこと?! それって「クローン」ってことじゃ・・・? クローンってことは、ある一定の条件、 つまりこの自然界が西洋タンポポだけ生存が難しい条件に変化をすると、 瞬く間に西洋タンポポは絶滅するって可能性もあるってことですよね。 まぁ、そんなこと在り得ないですけど、でも理論上は「あり」ってことですよね? ある植物学者さんの著書に面白いことが書かれてました。 「在来たんぽぽが敗れた相手は 西洋タンポポではなく、都市化という環境変化の波だ」と。 現在日本で繁殖しているたんぽぽには、 西洋タンポポ、つまり真性のダンディライオンではないものが多くあるそう。 どうやら西洋タンポポとカントウタンポポの雑種と思われるものも少なくないらしい。 ある研究者によれば、 「もしかしたら、日本に入ってきた西洋タンポポは、ほとんどが  在来種の血が混ざった雑種かも・・・」とも。 ん??? ところで、自分の庭で見かけるたんぽぽが 在来種なのか、西洋タンポポなのかお知りになりたい方のために 見分け方をお知らせします。 「総苞片」というお花のすぐ下にある緑色の「がく」のようなものの違いにご注目。これは、つぼみを包んでいたものなんです。  在来種のたんぽぽ
 西洋タンポポ
この違い、わかりますでしょうか・・・?
日本在来種のたんぽぽに会いたくなった人は
開発されなかったところへ行けば会えると思いますよ。
新潟大学の森田教授によると、赤坂御用地の土手でもまだ見られるとか。
たかがたんぽぽ、されどたんぽぽ。
暫くたんぽぽから目が離せそうにありません。